エッジAIラボ
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HARDWARE REVIEW

Hailo-10H AI HAT+2 実機レビュー

Raspberry Pi 5向け40 TOPS AIアクセラレータの実力を徹底検証。Hailo-8Lとの比較、ビジョンベンチマーク、GenAI(LLM)実測、セットアップ手順を解説します。

1. 製品概要

Hailo-10H AI HAT+は、イスラエルのAIチップメーカーHailo社が開発した Raspberry Pi 5専用のAIアクセラレータモジュールです。M.2 Key Mスロットを介して接続し、最大40 TOPS(1秒間に40兆回の演算)のAI推論性能を提供します。

Raspberry Pi財団が公式に「AI HAT+」として採用し、RPi OS(Bookworm)でドライバがネイティブサポートされています。 GStreamerパイプラインやPicamera2との統合により、カメラ映像のリアルタイムAI処理が数行のコードで実現できます。

Hailo-8L(13 TOPS)

  • 13 TOPS のAI推論性能
  • M.2 2242 Key B+M / Key M
  • 消費電力: 約2.5W
  • 実売価格: 約10,000〜13,000円
  • 入門・学習用途に最適

Hailo-10H(40 TOPS)

  • 40 TOPS のAI推論性能
  • M.2 2242 Key B+M / Key M
  • 消費電力: 約3.5W
  • 実売価格: 約16,000〜20,000円
  • 本格運用・マルチモデルに最適

AI HAT+2(Hailo-10H搭載・公式GenAIアドオン)

Raspberry Pi財団が2026年1月15日に発売した公式アドオン。Hailo-10H NPUに加えて8GB専用オンボードRAMを新搭載し(先代のAI HAT+には無かった)、 Hailo公式のGenAI専用ツールhailo-ollama経由でLLM/VLM推論にも対応する。少なくとも2036年1月まで生産継続予定。

  • 発売日: 2026-01-15
  • 価格: $130(国内実売は要確認)
  • オンボードRAM: 8GB専用(Pi5本体RAMとは別)
  • 対応: ビジョン + LLM/VLM(公式訴求)

根拠: raspberrypi.com公式発表 / 製品ページ / Hailo公式ブログ

2. エッジAIデバイス スペック比較

Hailo-8L / Hailo-10H と主要な競合デバイスを徹底比較します。

項目Hailo-8LHailo-10HJetson Orin NanoCoral USB
AI性能13 TOPS40 TOPS40-67 TOPS4 TOPS
アーキテクチャHailo-8L NPUHailo-10H NPUAmpere GPU + DLAEdge TPU (ASIC)
接続方式M.2 (PCIe Gen3)M.2 (PCIe Gen3)SoC (組込)USB 3.0
消費電力約2.5W約3.5W7-25W約2W
TOPS/W5.211.42.7-5.72.0
対応フレームワークHailoRT / TAPPASHailoRT / TAPPASTensorRT / PyTorchTFLite / PyCoral
対応モデルYOLO / SSD / etc.YOLO / SSD / etc.ほぼ全モデルTFLite限定
ホスト要件RPi 5 + AI HAT+RPi 5 + AI HAT+スタンドアロンUSB対応PC/SBC
実売価格約10,000円約16,000円約35,000〜80,000円約10,000円
総コスト目安約23,000円約29,000円約45,000〜90,000円約10,000円+PC

※ 価格は2025年時点の国内実売価格の目安。為替・在庫により変動します。

3. 開封・外観

Hailo-10H AI HAT+は、Raspberry Pi 5のGPIOヘッダー上に積層する形で装着するHAT(Hardware Attached on Top)ボードです。 M.2スロットにHailoチップを装着済みの状態で出荷されます。

65 x 56.5mm

サイズ

Raspberry Pi 5とほぼ同サイズ。スタッキングで一体化。

約25g

重量

ヒートシンク込みでも軽量。ポータブル運用が可能。

パッシブ放熱

冷却

付属のサーマルパッドでPi 5のファンと連携。追加ファン不要。

同梱物チェックリスト

  • - AI HAT+ ボード本体(Hailoチップ装着済み)
  • - GPIO延長ヘッダー / スペーサー / ネジ
  • - FPCケーブル(カメラ/ディスプレイ用)
  • - サーマルパッド
  • - クイックスタートガイド

4. セットアップガイド

1

ハードウェアの取り付け

  1. 1.Raspberry Pi 5の電源を切り、すべてのケーブルを外す
  2. 2.GPIOヘッダーに延長ピンヘッダーを装着
  3. 3.スペーサーを取り付け、AI HAT+をスタッキング
  4. 4.サーマルパッドをHailoチップ上面に貼付
  5. 5.FPCケーブルでカメラポートを延長(カメラ使用時)
2

Raspberry Pi OSの更新

# RPi OS Bookworm以降が必要
sudo apt update && sudo apt full-upgrade -y
sudo reboot

# カーネルバージョン確認(6.6以降推奨)
uname -r
3

Hailoドライバのインストール

# Hailo RT + TAPPAS をインストール
sudo apt install hailo-all -y
sudo reboot

# 認識確認
hailortcli fw-control identify
# → Hailo-10H が認識されればOK

# デバイス情報の確認
hailortcli fw-control examine
4

動作テスト

# rpicam-hello でカメラテスト
rpicam-hello -t 5000

# Hailo付きで物体検出テスト
rpicam-hello -t 0 \
  --post-process-file /usr/share/rpi-camera-assets/hailo_yolov8_inference.json

# Python (Picamera2) での推論テスト
python3 -c "
from picamera2 import Picamera2
from hailo_platform import HailoDevice
print('Hailo devices:', HailoDevice.scan())
"

5. ベンチマーク結果

YOLOv8n(物体検出)・MobileNetV2(画像分類)・EfficientNet(分類)を各デバイスで実行し、 FPSとレイテンシを計測しました。

物体検出 (YOLOv8n / 640x640)

デバイスFPSレイテンシ消費電力FPS/W
RPi 5 (CPUのみ)3330ms5W0.6
Coral USB1283ms7W1.7
RPi 5 + Hailo-8L3033ms7.5W4.0
RPi 5 + Hailo-10H6017ms8.5W7.1
Jetson Orin Nano (8GB)8012ms15W5.3
RPi 5 (CPU)
3 fps
Coral USB
12 fps
Hailo-8L
30 fps
Hailo-10H
60 fps
Jetson Orin Nano
80 fps

画像分類 (MobileNetV2 / 224x224)

デバイススループット (img/s)レイテンシ備考
RPi 5 (CPU)2540ms4コアフル活用時
Coral USB10010msINT8量子化モデル
RPi 5 + Hailo-8L3003.3msINT8量子化
RPi 5 + Hailo-10H6501.5msINT8量子化
Jetson Orin Nano8001.3msTensorRT FP16

※ RPi 5は8GBモデル使用。室温25度、ケースなし(オープンエア)。消費電力はシステム全体。数値は参考値であり環境により変動します。経験則(要検証)

6. 電力効率分析

エッジAIデバイスの選定では、AI性能だけでなく電力あたりの性能(TOPS/W)が重要です。 24時間稼働のカメラシステムや、バッテリー駆動の機器では電力効率が運用コストに直結します。

Hailo-10H

S

11.4 TOPS/W

圧倒的な電力効率。バッテリー駆動にも対応可能。

Hailo-8L

A

5.2 TOPS/W

コスパと省電力のバランスが良好。

Jetson Orin Nano

B

2.7-5.7 TOPS/W

高性能だが消費電力も高い。電源設計に注意。

Coral USB

C

2.0 TOPS/W

USBバスパワーで動作可能だが性能は限定的。

24時間稼働時の月間電気代の目安

RPi 5 + Hailo-10H(8.5W): 約190円/月

RPi 5 + Hailo-8L(7.5W): 約165円/月

Jetson Orin Nano(15W): 約330円/月

Jetson Orin Nano(25W): 約550円/月

※ 電気代31円/kWhで計算。経験則(要検証)

7. コストパフォーマンス分析

初期投資(デバイス代)+1年間の電気代で総コストを計算し、TOPS単価とFPS単価を比較します。

構成
初期費用
年間電気代
1年総コスト
円/FPS (YOLO)
RPi 5 + Hailo-8L
23,000円
1,980円
24,980円
833円/fps
RPi 5 + Hailo-10H
29,000円
2,280円
31,280円
521円/fps
Jetson Orin Nano 8GB
45,000円
3,960円
48,960円
612円/fps
Jetson Orin Nano Super
80,000円
6,600円
86,600円
722円/fps

結論

Hailo-10Hが円/FPSで最もコスパが良い。Jetson Orin Nanoは絶対性能では上回りますが、コスト効率ではHailo-10Hが優位です。 ただしJetsonはPyTorchのネイティブ実行やGPU汎用計算が可能なため、開発の柔軟性を重視するならJetsonが有利です。

8. ユースケース

📷

防犯カメラ

Hailo-8L

人物・車両の検出、侵入者アラート。24時間低消費電力で稼働可能。Hailo-8Lの30fpsで十分実用的。

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🏭

工場品質検査

Hailo-10H

製品の外観検査・欠陥検出。60fpsの高速処理でライン速度に追従。Hailo-10Hが最適。

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🤖

ロボティクス

Hailo-10H

画像内の前後関係を相対深度として可視化。測距やナビゲーションには較正済みセンサーと用途別の安全検証が必要。

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🦺

安全管理

Hailo-8L

ヘルメット・安全ベスト・保護具の着用検知。建設現場や工場の安全管理を自動化。

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🐾

野生動物モニタリング

Hailo-8L

森林・河川での動物検出。太陽光パネルとバッテリーの省電力運用が可能。

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🚗

駐車場管理

Hailo-10H

空き状況の自動判定、ナンバープレート認識。複数カメラの同時処理にはHailo-10H推奨。

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9. メリット・デメリット

メリット

  • 40 TOPSの高いAI推論性能
  • 圧倒的な電力効率(11.4 TOPS/W)
  • Raspberry Pi公式サポート(ドライバが安定)
  • RPi OSネイティブ統合(apt一発インストール)
  • 小型軽量(ポータブル運用可能)
  • 月間電気代約190円(24時間稼働)
  • GStreamer / Picamera2との統合が容易
  • ヒートシンクのみで冷却可能(ファンレス運用も可)

デメリット

  • Raspberry Pi 5専用(他のSBCでは使えない)
  • 対応モデルはHailo Model Zooに限定される
  • カスタムモデルの変換にHailo DFCが必要(学習曲線あり)
  • Jetsonに比べるとモデルの自由度が低い
  • GPUの汎用計算(CUDA相当)はできない
  • PCIe Gen3接続のため帯域幅に上限あり
  • 国内の技術情報・コミュニティがまだ少ない
  • RPi 5本体の購入が別途必要

10. おすすめ構成・購入ガイド

入門おすすめ

RPi 5 + Hailo-8L

エッジAIの学習・プロトタイピングに最適。30fpsの物体検出で防犯カメラやペット監視にも十分な性能。

総額: 約23,000円

本格運用おすすめ

RPi 5 + Hailo-10H

60fps物体検出でリアルタイム処理が求められる産業用途に対応。マルチモデル同時実行も可能。

総額: 約29,000円

Jetsonを選ぶべきケース

  • - PyTorchモデルをそのまま実行したい(ONNX/TFLite変換なし)
  • - GPU汎用計算(CUDA)が必要なワークロード
  • - 複数カメラの同時処理(4ストリーム以上)
  • - モデル開発・学習もデバイス上で行いたい

11. GenAI/LLM実測(AI HAT+2)

よくある誤解

「HailoはビジョンCNN専用でLLMは動かせない」という説明を見かけますが、正確には「汎用のOllama/llama.cpp(GGUF形式)がHailoのNPUに対応していない」だけです。 Hailo-10H(AI HAT+2)限定で、Hailo公式のGenAI専用ツールhailo-ollamaを使えばNPU上でLLM推論ができます。本セクションは実機に接続して実際に検証した結果です。

図解:同じ「LLMに質問する」でも、ツールで行き先が変わる

💬 LLMへの質問

(Raspberry Pi 5 + AI HAT+2)

汎用ツール

Ollama / llama.cpp(GGUF)

🖥️ CPU実行

NPU(Hailo-10H)は使われない

Hailo公式ツール

hailo-ollama

🧠 Hailo-10H NPU実行

実測: モデル次第でCPUより速い/遅い

「Hailo=ビジョン専用でLLMは動かせない」は汎用ツール経由の場合の話。 Hailo公式のGenAI専用ツールを使えば、Hailo-10H(AI HAT+2)限定でNPU上のLLM推論もできる。

セットアップ手順(hailo-ollama)

# GenAI Model Zoo(hailo-ollamaコマンドを含む)
sudo apt install hailo-gen-ai-model-zoo -y

# サーバ起動(既定ポート8000。一般的なOllamaの11434とは別)
hailo-ollama &

# 利用可能モデルの確認(llama3.2:1b, qwen2.5:1.5b, qwen2:1.5b,
# qwen2.5-coder:1.5b, qwen3:1.7b, deepseek_r1:1.5b の6種)
curl http://127.0.0.1:8000/api/tags

# 初回は明示的にpullしてから使う(pullしないと "model not found")
curl -X POST http://127.0.0.1:8000/api/pull \
  -H 'Content-Type: application/json' \
  -d '{"model":"qwen2.5:1.5b"}'

# チャット形式で推論(/api/generateより応答が安定する)
curl http://127.0.0.1:8000/api/chat \
  -H 'Content-Type: application/json' \
  -d '{"model":"qwen2.5:1.5b","messages":[{"role":"user","content":"エッジAIとは何か、3文で説明して"}]}'

つまずきポイント: ①Content-Type: application/jsonヘッダが無いと500エラー ②pullせずに generate/chat すると「model not found」 ③補完形式の/api/generateより会話形式の/api/chatの方が出力が安定。

実測: NPU (hailo-ollama) vs CPU (同一Pi5・素のOllama)

モデルNPU tok/sCPU tok/s備考
Llama 3.2 1B9.698.72NPUが約11%速い
Qwen2.5 1.5B7.2311.76CPUが約63%速い

Llama 3.2 1B

🧠 NPU
9.69
🖥️ CPU
8.72

Qwen2.5 1.5B

🧠 NPU
7.23
🖥️ CPU
11.76

実測: 2026-07、Raspberry Pi 5 + AI HAT+2(Hailo-10H・HailoRT 5.3.0・hailo-ollama 0.5.1)。同一プロンプト・num_predict=80/api/chatで1回ウォームアップ後に1回計測(複数回平均ではない・単発計測)。温度53.8℃・スロットリングなし。Qwen2.5のNPU出力にごく軽微な文字化けアーチファクトを確認。「40 TOPS」という公称値だけでは速さは決まらず、モデルによってCPUが勝つこともある(小型LLMはメモリ帯域律速のため)。経験則(要検証・単発計測)。

VLM(画像+言語)について

Hailoの公式マーケティングはVLM(vision-language model)対応も謳っていますが、apt既定パッケージ(hailo-gen-ai-model-zoo)に含まれる6モデルはすべてテキストのみのLLMで、VLMモデルは含まれていませんでした(本セッションで実機確認)。Hailo Developer Zone経由で別途VLMモデルが提供されている可能性がありますが、本ページでは未確認のためVLM実測は掲載していません。確認でき次第追記します。

Hailo AI HAT+ と関連機材

この記事で紹介したHailo AI HAT+とRaspberry Pi 5の関連機材はこちらから購入できます。

🧰 構成の目安(用途で選ぶ・全部を合算する必要はありません)
最安構成¥35,000

Raspberry Pi 5 + AI Camera(IMX500)。現場の一次検証・PoCに手頃。

安定構成¥68,000

NVIDIA Jetson Orin Nano + AI Camera(IMX500)。複数カメラ・高精度・連続稼働に対応。

価格は目安(変動あり)。下のカードから用途に合うものを選んでください(全点を揃える必要はありません)。

大型構成もっと大きなモデルを本格的に動かすなら(高性能ミニPC)

大きなモデルの生成・推論や複数モデルの常時稼働には、Pi/Jetsonより大容量メモリ・高性能CPU/GPUを積める高性能ミニPCが快適です。

👑 まずこの1台
高性能目安 ¥55,000

NVIDIA Jetson Orin Nano

最大67 TOPSのAI性能。複数カメラの同時処理や高精度モデルの実行に最適なエッジAIボード。

📷おすすめ目安 ¥13,000

Raspberry Pi AI Camera(IMX500)

Sony IMX500搭載のAI処理内蔵カメラ。カメラ側でAI推論を実行し、ホストの負荷が極めて低い。

🖥️定番目安 ¥22,000

Raspberry Pi 5

エッジAIの定番ボード。8GB RAMモデルでAI推論からカメラ制御まで幅広く対応。

🎥目安 ¥5,000

4K Webカメラ(AI対応)

高解像度のWebカメラでAI認識の精度が向上。オートフォーカス・広角対応モデルがおすすめ。

🧠GenAI対応目安 ¥20,000

Raspberry Pi AI HAT+2(Hailo-10H)

2026年1月発売の公式GenAIアドオン。40 TOPS・8GB専用オンボードRAM搭載。hailo-ollama経由でNPU上のLLM推論にも対応(実測はHailo-10Hレビュー参照)。

🧠高性能目安 ¥13,000

Hailo-8L AIアクセラレータ

13 TOPSのAI推論性能。Raspberry Pi 5のM.2スロットに装着してAI処理を高速化。

🔌目安 ¥13,000

Google Coral USB Accelerator

既存のPCやRaspberry PiにUSB接続するだけでAI推論を高速化。4 TOPSのEdge TPU搭載。

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